GWと新型インフルエンザとネットトレード

週末から連日新型インフルエンザのニュースが報道されています。
この豚インフルエンザですが、WHOが日本時間今朝未明、人から人への限定的な感染を示す現在の「フェイズ3」から、更に状況が悪化し新型インフルエンザが発生し局地的な感染が見られる「フェイズ4」に引き上げることを決定。
これを受け、厚生省は「新型インフルエンザ」と認定、日本政府は発生国、感染国からの旅客機・客船の入港を成田など4空港と3港に限定する方針を示しています。
発生地はメキシコということもありEUは隣接する米国などへも異例の渡航中止勧告がだされていますが、欧州では既にスペインで感染者が確認されたと報道されています。

日本も決して他人事ではなくGW中であるということもあり、更に「新型インフルエンザ」となればいわゆるパンデミック(pandemic)になる可能性もあり非常に心配ですね。

インフルエンザが流行ると決まって同意づくのがダイワボウ(3107)。
昨日はストップ高していました。
マスクをしたり外出を控えるというレベルでは済むはずがありませんので、政府の水際防止策の徹底を望むしかありません。

外出が控えられるといいますと、GW中は例年、ネット取引が急増するようです。
それは日中お勤めで普段トレードしない方が一斉にトレードをするからですね。
2005年頃からの傾向らしく、日経225先物にも何度かの動きに思い当たるふしがあります。
確かに盆休みなどもよく薄商いの中、特異な動きを見せることがありますね。
某ネット証券会社の調べでは昨年4/28が年間で最も出来高が高かったそうです。
まさにGW真っ最中ですね。
個人投資家中心のネットトレード証券会社だからでしょうが、興味深いデータです。
今年は米国の金融システム不安が依然払拭されていないこともあり、ストレステストの結果待ち状態、更に米自動車ビッグ3の問題が未解決で様子見姿勢の公算が高く、あまり動意づくことは期待できませんが、そういったイレギュラーな値動きには要注意です。
ただ、そもそも不安材料が盛り沢山の今、無理してトレードする必要は全くないでしょう。
短期用の戦略で動きを追うのはいいですが、イグジットの設定は細かく設定しあまり深入りしない方がいいと思います。今のタイミングではアービトラージ以外は1日、2日でも持ち越し型のシステムはリスクが大きくなります。
情勢が不透明なときはやらないに限ります。相場はいつでも開いています。やはり休むも相場ですね。

WBC優勝と日経平均株価

アメリカでのWBC(ワールドベースボールクラシック)の認知度はとても低いのですが、日本では連日大盛況。
注目のWBC決勝は日本VS韓国が5度目の激突。
大接戦の末5対3で日本が勝利しV2連覇を達成。
アメリカ、キューバに勝利しての文句なしの優勝。
日本中が勝利に酔いしれました。

冒頭のイチロー選手のヒットに始まり、小笠原選手の先制打。
中島選手のレフト前へのタイムリー、そして岩村選手の渋い犠牲フライ。
岩隈投手の好投もあり、追われつつもなんとか日本がリードしていましたが、わずか1点差での攻防。

試合が鬼気迫る後場の値動きは、わずか20円値幅の横ばい。

相場どころではないトレーダーたちは文字通り釘付けだったのでしょう。
日本人がここまで心をひとつにできるのはオリンピックくらいなもの。
米大統領選挙のようなナショナリズムは日本人には味わえないのだろうと思っていましたが、それに近い団結力といいますか愛国心を呼び覚ますものでした。

2009年3月24日WBC優勝と日経平均株価

この思いは市場関係者も例外ではなかったようですね。

丁度ダルビッシュ投手が2連続4ボールを出し、痛恨の同点打をくらった9回裏。
日経平均は安値圏。
歓喜が悲鳴に変わり、日本人の心は折れかかり諦めムードが漂う中、直後の延長10回表、まさに劇的ともいえるイチロー選手の2点タイムリーで再び逆転。
日本の優勢が確実視されるにつれ日経平均株価は急速反転をはじめました。
金メダル授与の14:50頃には本日の最高値となる8504.41(日経225先物は8460円)を記録。

昨日のNYダウが「不良資産買い取り計画」の詳細が示されことを受けて今年最大の上げ幅を記録する500ドル近い大幅上昇をした翌日でもあり、序盤は反動安の展開でした。
寄り天基調で前場から失速していた日経平均はこのニュースのおかげか結局大幅高で本日の取引を終了しています。

非常に興味深いですね。
半分以上を外国人投資家が占めるといわれる日本市場でこのような値動き。
これこそまさに「ご祝儀相場」といえるかもしれません。
ありふれた言葉では語りつくせない選手たちの苦悩やプレッシャーによる重圧からもようやく解放され、試合後のシャンパンファイトで子供のようにはしゃぐイチロー選手の笑顔を見ると日本人であれば誰もが感情移入してしまうのではないでしょうか。

侍JAPAN。
「侍」=”SAMURAI”は時に日本の歴史と日本人の勤勉で謙虚な気質を凝縮した形でしばしば日本人の代名詞となることば。
原監督は今回のWBC監督就任に際し自らの名を冠した呼び方をせず他のネーミングを希望したと聞きます。
従来の報道の慣例からすれば「長嶋JAPAN」、「王JAPAN」、「星野JAPAN」でしたから今回も当然「原JAPAN」となるはずです。
しかし原監督は「まだ自分は歴代のこの人たちには値しない」と考え、コミッショナーや球団関係者に別の呼び方をお願いしたそうです。そして名づけられたのが「侍JAPAN」。原監督はこの名前をとても気に入り今回の大会にのぞんだといいます。

世界ランク1とされるキューバに対しては15日(6-0)、18日(5-0)と2度も大差で勝利したにも関わらず会見では勝ち誇った態度は一切なく「尊敬するキューバ」に勝ててよかったと終始謙虚なコメント。キューバのカストロ議長は対戦前に「日本は時計のように精密だが勝機はある」というコメントを残していたそうです。
Winner、Loserともに称え合う心を持ち、互いに敬意を払っている姿は美しいと思いますね。
戦後の焼け野原から高度経済成長を遂げた日本の底力はこの日本人気質に通じるところがきっとあるに違いありません。

Lighting Schedule 3.24.2009 Empire State Building

Empire State Building/Lighting Schedule
Empire State Building Company L.L.C. All Rights Reserved.

追記:
主催国のアメリカにとってはまたも思惑がはずれ他国が優勝をさらったことになってしまいましたが、エンパイアステートビルには日の丸色のライトアップが施され、日本の健闘を称えています。

原JAPAN。
おつかれさまでした。感動をありがとう。

GDPの歴史的落ち込みに直面する日本 打開策はあるのか

NYダウは6年ぶりに安値を更新。
米国大統領は就任後100日間が選挙に勝利した余韻から最も強いイニシアティブがとれると言われていますが、就任後1ヶ月足らずで早くも厳しい現実を突きつけられているようです。
銀行の国有化、米ビッグ3などの超大手企業の破綻、そんなシナリオをありえないことと一蹴できない何かが一層リセッションへの懸念を深刻化させており、株価を押し下げているようです。

“worries about the deepening recession”

景気後退を嫌気、そんな紋切り型の相場解説は聞き飽きたほどですが、他に言いようがないのも事実かもしれません。
株価は半年後を織り込むといいますが、明かりが見えたかに思えた米国発の景気対策は暗礁に乗り上げ、再び先の見えない世相を反映しているように思えます。

オバマ大統領が、かのFルーズベルト大統領のように歴史に名を残すかどうかは後世の歴史家にしかわかりません。
長い目で推移を見守るしかなさそうです。

ただ、NYダウの2002年来の安値で終わった現実は直視すべきでしょう。

日本も他人事ではありません。
先日のGDPのマイナス成長を見ると分かりますが、その落ち込みは歴史的なものでした。
実質GDPは年率で12.7%のマイナスとかつてないほどの落ち込みを記録。

GDP前期比% 7-9月期   10-12月期
国内需要  -0.3%       -0.3%
輸出    +0.3%        -13.9%   
 

2008年10-12月期のGDP成長率は、米国が-3.8%、ユーロ圏が-5.7%、英国が-5.9%であるのに対し、日本は-12.7%。
輸出立国の日本の脆弱さが改めて露呈されたといえ、米国発の金融危機において、震源地よりも実は日本が一番深刻だったことを直視すべき事態に迫られています。
G7中最大の落ち込みという事実は、今まで楽観的だった市場関係者をして見方を改める必要性を感じさせたことでしょう。
政府も報道も頭を切り替えなければならないときですが、まだ聞こえてくる声は対岸の火事的表現が多く、あまり危機感をもった行動がなされていないことに一抹の懸念を隠しきれません。

政策は遅々として進まない印象はもはや末期的ともいえます。
麻生総理の支持率低迷に加え、中川大臣のG7会見での失態といった失望させる材料ばかりを提供する日本は、ますます海外投資家の関心を失いつつあるようです。
それは連日の外国人による断続的な売越をみても明らか。

現状を打開するには教科書的な話でいえば大規模な財政出動なのでしょう。
財政の裏づけはともかく、それも単発で行うのではなく、各国一斉に行うことが肝要。

一般に財政出動がなされると「金利」が上がり、それに伴って海外からお金が流入すると「為替」が上昇。
為替が上がると今度は「輸出」が減り相殺されてしまいます。
つまりは経済対策も「行って来い」になってしまうというのが一般論です。

「金利」、「為替」、「輸出」
これらをいかに整合させるかが鍵となります。

主要各国が一斉に財政出動すると金利が同時期に動き、上がっても中国と米国も上がるので為替も安定します。
為替がニュートラルであれば輸出にも影響が少なくなるという理屈です。

現状において発表されている各国の経済対策は以下の通りです。
財政政策には公共事業や減税が挙げられますが、まだ目に見えるどころか金額さえはっきりしていない日本はどうかとも思いますが。

米国 72兆円
中国 53兆円
日本 12兆円(GDP発表を受けて追加予定)
ドイツ 11.6兆円
イタリア 9.3兆円
イギリス 2.6兆円

GDPの世界順位からしても、もう少し日本が貢献できないかとも思えます。
やや温度差を感じさせるのは否定できません。

大金を投じる以上、スピード感をもってタイミングよく行わなければお金に見合ったパフォーマンスは得られないのに、今の政府の政策ははねじれ国会の為、遅々として進まず、さらに足並みをそろえるのが必要なときに中川大臣の辞任劇が追い討ちをかけています。
ただ、政治不信の理由を大臣の醜態や小泉元首相発言のゴシップでお茶を濁している場合ではないでしょう。

近々の麻生内閣退陣説がまことしやかに囁かれるのも無理からぬことですね。
選挙なしで4人も首相が変わるのはいかがなものかとも思いますが、十分ありえることなのが悲しい限り。

このままで日本は大丈夫なのでしょうか。

かかる状況の中、日経平均は再び安値圏に落ち込んでいます。
トレンド的には再び昨年秋の安値更新が視野に入ってきています。
大口の投資家は逆張りで底を仕込もうとするものですが、状況が違ってきています。

目先の反発意欲は高まっていますが7500円近辺の売り仕掛けと買い支えは拮抗しており、その内実は公的年金だけという始末。
目先反発と下値余地。
どちらに振れるにせよ、短期トレーディングならいずれにも対処できますのでそのときまで体力温存が肝要なのではないでしょうか。
安易な逆張りは禁物で、手控え、様子見が賢明でしょう。
焦っても資金を失っては元も子もありません。
相場はいつでも開いているのですから。

オバマ政権誕生 喜んでつかむ義務とその対価

日本時間では本日未明、バラク・オバマ氏が第44代アメリカ大統領に就任し、名実ともにオバマ政権が誕生。その演説に米国民だけでなく世界中の人々が注目。
就任式には250万人の人々が参列し祝賀ムード一色。支持率も80%を超えるなど期待の大きさがうかがえますが、一方で米国株式市場は大幅安となり早くも厳しい現実をつきつけられた格好です。
丁度この就任式を節目に年末年始の祝賀的なオバマラリーは終了。年末年始の値動きとしては大方の投資家たちの予想通りの結果だったといえましょう。
今後は民主党大統領就任初期のアノマリー通り下降線をたどるのか、歴史に真の変革者として名を刻むのか、これからが本当の正念場といえそうです。

What is demanded then is a return to these truths. What is required of us now is a new era of responsibility – a recognition, on the part of every American, that we have duties to ourselves, our nation, and the world, duties that we do not grudgingly accept but rather seize gladly, firm in the knowledge that there is nothing so satisfying to the spirit, so defining of our character, than giving our all to a difficult task.

ポイントは大胆かつ迅速な政策を矢継ぎ早に繰り出せるかにあるのでしょうが、使うのは国民の血税です。
これを国民に「喜んでつかむ義務」と思わせられるかが、米国に限らず日本のリーダーにも手腕が試されるところですが、現状では両国はかなり対照的といえます。
日本の麻生政権はこのスピードが求められる危機的状況の中、打ち出す政策は遅々としマーケットインパクトに欠けるややピントのずれた議論が繰り広げれられているようです。
その対価のビジョンがをはっきり見せてくれれば国民は喜んで痛みに耐えるのでしょうが。

本日の日経平均も12月3日の安値を更新してスタート。
日銀は金融政策決定会合が22日まで開かれます。
このまま日経平均が上下のどちらに推移するにせよ短期トレーディングには大きなチャンスが生まれてきそうです。

昨年のリーマンショックに端を発した金融危機以降、稀に見る乱高下を続け依然として先行き不透明感がぬぐえないマーケットですが、当戦略のひとつ、アービトラージ(裁定取引)戦略はどんな相場にも低リスクで対応できる点が特徴。
昨年からこの年末年始を通じて大きな上昇下降も恐れるに足らず見事なタイミングを示していることが実証されており、このオバマ大統領就任前後でも微妙なシグナルを発していたところでした。
(*因みに、よくお問い合わせを頂くのですが、裁定戦略におけるエントリポイントを夜間にチェックされる場合は、大引けの15:10時点の値を確認して下さい。)

恭賀新年

謹んで新年のお慶びを申し上げます

旧年中はひとかたならぬご用命を承り、また格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。
年末受付分につきましては順次お手続きに入らせて頂きます。
すでに大変多くの方からご好評のお便りを賜り望外の極みに存じます。
誠にありがとうございます。
本年もより一層の向上に努めて参る所存でございます。
何卒相変わりませずご愛顧賜りたく、倍旧のご支援のほどお願い申し上げます。
皆々様のご繁栄、ご活躍を心よりお祈り申し上げます。

平成21年 元旦

歳暮のご挨拶

本年2008年は激動の年でした。
昨年から燻り続けてきた金融不安は一気に爆発し未曾有の金融危機として顕在化。
株式市場にかつてないほどの大混乱をもたらした一年といえましょう。

しかしまた同時に身の丈にあわない小手先のレバレッジ優先の投資戦略はことごとく淘汰され、本物の投資戦略だけが生き残ったという点では深く大きな意義を見出せる1年だったともいえます。
9月のリーマンショックに始まった一連の株安の連鎖はついにバブル後最安値を下回るまでになり、その下落する様はまさに急転直下。
「急転直下」の本来の語源は急激に物事が変わり解決に至ることにあります。
10月につけた大底が本当の大底となり現在の上昇は不安材料を織り込み回復へ向かっているのか、はたまた年末特有の掉尾の一振にすぎないのかはまだわかりません。
その落ちた先においては未だに根本的な問題は解決しないままに本年も終わろうとしています。

最安値を記録した10月、その1ヶ月間に下落する幅の大きさとしてはまさに前代未聞の荒い値動きが頻発。
連日にわたり先物市場でサーキットブレーカーが発動されるなど歴史的に特筆すべきことが多々あった年でもありました。
年初大発会の日経平均株価は15155円から始まり、昨日の大納会では8859円で取引を終了しています。その差は実に6千円以上。バブル高値時ならいざ知らず、近年における1万円そこそこ水準の指数の下落幅としては異常な数値です。最安値更新時は半値以下まで落ち込む場面もあったほどです。

今回の金融危機により、日経平均の下落率は過去最大を記録したわけですが、近代稀に見るかかる異常な激動相場でも日経225における本戦略はその優位性が改めて実証されています。

市場心理の掌握、大きく負けないことに徹したトレード。
各種デイトレード戦略、裁定取引戦略、これらは市場心理に根ざしたものとしていわば普遍的なものなのかもしれません。100年に1度といわれるこの相場でさえも。
いくらプログラム売買が発達してきた今日といえども相場というものを人間が操っている限り、相場における基本戦略は変わらないよい証左といえましょう。

本年中は格別のご高配を賜りまして厚く御礼申し上げます。
昨年から引き続き一層のご愛顧を賜り深く感謝申し上げます。
今後もより一層の充実を図るべく鋭意努めて参る所存です。

良い御年をお迎え下さい。
末筆ながら来年も相変わらずのご愛顧を賜りたく、謹んで歳末のご挨拶を申し上げます。

端株処理による売買停止の影響 日経平均採用銘柄は7銘柄

来月5日の株券電子化に伴い18社の株式が今月12月25日から30日までの間、売買停止となります。
1株に満たない端株をなくすための手続に入るためです。
端株とは株式分割や経営統合などで発生したもの。

年末年始含め実質10日以上売買できなくなるため、指数への影響もあるかもしれません。
18銘柄のうち7銘柄が日経平均株価採用銘柄だからです。

該当するのはみずほや電通、NTTなど。

《売買停止18銘柄》*日経平均採用銘柄
*日本製紙(3893)
*電通(4324)
*りそなHD(8308)
*三井住友FG(8316)
*みずほFG(8411)
*JR東日本(9020)
*NTT(9432)

fonfun(2323)
コカ・コーラセントラルジャパン(2580)
ラウンドワン(4680)
シダックス(4837)
トウアバルブグループ(6466)
京都きもの友禅(7615)
札幌北洋ホールディングス(8328)
八千代銀行(8429)
大和SMBCキャピタル(8458)
原弘産(8894)
インプレスホールディングス(9479)

米ビッグ3はいまだ根本的な問題解決には至っていないようですね。
フォードを除く2社は政府のつなぎ融資で年内はを乗り切りそうなものの、延命措置を施しただけで問題を先送りにしただけのようです。
以前WSJの記事でもあった事前調整型の破綻というシナリオについても米報道官が選択肢の一つとして明言しており、将来的にはやはり破綻の容認を示唆しているように受け取れます。
いずれにしても落としどころはうすうすながら分かってきたような気がしますね。

もう今年もあと残すところ10日。
例年この時期は商いが低迷します。
日本の株式市場といっても半分以上が外国人の売買によって成り立っているわけですので彼らが休暇入りするクリスマスシーズンはどうしても売買は細ります。
今回の端株処理も相俟って更に商いは閑散とする見込みでしょう。
「閑散に売りなし」といいますが、先物は盆休みシーズンにもよく見受けられるように需給に関係なく仕掛け的な売買が横行することがありますので注意を要します。
これは大口の個人トレーダーが台頭し日経225先物が人気化してきた近年の傾向ですね。

映画「不都合な真実」

米ビッグ3救済に向けて審議するため、再建計画提出後に公聴会が開かれましたが見通しがたたないまま来週以降に持ち越されている状況。
雇用統計など経済指標は予想以上の悪化を示すものにもかかわらず、週末のNYダウは売りが一巡すると大幅に切り返しています。
方向性は依然不透明なままでこの問題が織り込み済みなのかも不明です。

公的支援が認められたらそもそも市場にプラスになるのかも本来なら疑問なところです。
金融機関以外の事業体に、ただ規模が大きく影響があるからといって自動車メーカーを支援すれば、公平性の観点から半導体のメーカーまでも支援しなければならない理屈になってしまうからです。

GMワゴナーCEOは自家用ジェットを自粛して電気自動車で議場入りしたり、今までの経営に誤りがあったことを認めるなど話題となっていますが、ただいくら改悛の情を示しても要求額があまりにも莫大であり、再建実現に具体性もないため、現状では否定的な見方が大勢であるという状況に変わりはありません。
そもそもこの問題は地球温暖化への対策を怠ってきた現ブッシュ政権のエネルギー政策にも遠因があるでしょう。
反省すべきは米ビッグ3だけではないのかもしれません。

今になって思えば、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副大統領の「不都合な真実」が思い出されます。
今回のビッグ3の問題は、エネルギー問題を棚上げにし不都合な真実を黙認してきたツケともいえるのではないでしょうか。

不都合な真実

「不都合な真実」
“An Inconvenient Truth ”
2006 by PARAMOUNT CLASSICS,a Division of PARAMOUNT PICTURES.All Rights Reserved. TM,(R)& Copyright © 2007 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

いわずと知れたゴア氏のライフワークの集大成とも言える作品で、ノーベル平和賞を受賞するきっかけにもなった氏の啓蒙活動の一部をドキュメントタッチで描いた映画です。
終始ゴア氏がスライドで講演している形式のものですが、全く飽きない魅力的な映画として評価されています。
今まで環境問題に無関心だった人でも見入ってしまうことでしょう。
この作品はあまりにも反響が大きくその分批判も多かった映画でも有名ですが、私は科学者ではありませんので、この中に登場する瑣末的データについて逐一論評するつもりはありません。
ただいえることは、京都議定書策定以降環境問題へ消極的だったアメリカに一転して関心の目を向けさせた点では、非常に意義のあるものだったといえるでしょう。
米国であれほどプリウスがヒットしたのはある意味ゴア氏のおかげかもしれませんね。

公聴会で認めた米ビッグ3首脳陣の「過去の誤り」は、アメリカ人皆が認識しなければならないものだったのではないかということです。

目をそらしてはいけない真実。
それは筆舌に尽くせないほど恐ろしいものです。
このまま座視したらどうなるか、同じ地球に生きる人間としてこの問題を再認識する契機にはなると思います。

庭に木を植える、ごみを分別、リサイクルなど、それらを一部の人が実践してもたかがしれていますね。
手っ取り早いのは自動車の排ガスを規制し、石油に頼らないエネルギーシステムを一刻も早く構築、普及させることでしょう。

われわれ国民は多額の税金を払っています。
2兆円の定額給付金などという客寄せ選挙対策を行うより、もっと意義のある使い方をしてほしいものですね。
国会議員とは国民から集めた税金を適正かつ公平に再配分する使命を負っている職業のはずですから。

全家屋の屋根に太陽光パネルを設置できるよう援助するとか、プラグインハイブリッドカーや電気自動車の開発、それを普及させるためのインフラ整備など積極的に資金援助すべきことはたくさんあるはずです。
原油に頼らなくても豊かな生活を送るために行政サービスが充実するとあらば国民は喜んで税金を払うでしょう。

米ビッグ3は電気自動車の開発にもその支援の一部を使うと明言しています。
今回の米国におけるビッグ3への公的資金注入も批判が多いですが、お金の使いようによっては市民の支持は得られると思います。
ただあの具体性に欠けた再建計画と公聴会の様子では難しそうですが。

米ビッグ3 破綻を前提としたシナリオ?

ようやく米ビッグ3の再建計画が提出されました。
総額340億ドルの支援要請。

GMが180億ドル、フォードが90億ドル、クライスラーが70億ドル。

GMは特に要求額が巨額で前回よりもさらに増えています。
自家用ジェット機売却や首脳の報酬1ドルとするなど市民の反感や批判を意識したものでしょうが、依然救済への反対の声は大きそうです。
議会と市民の理解が得られるか甚だ不明。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)

公的資金投入への反対論は依然根強く、政府支援に向けて議会がまとまる可能性は現時点では低そうです。
破綻によるパニックは避けたいと願うのは誰もが同じですが、来週末の12日までに支援策がまとまらない場合、この問題は次期オバマ政権の発足まで先送りされてしまうかもしれません。

Wall Street Journal DECEMBER 3, 2008

WSJによればビッグ3の破綻を前提とした政府支援策の構想が浮上しています。
一旦破綻手続きをした後に、公的資金を投入するとするシナリオもありえるということですね。

Wall Street Journal DECEMBER 3, 2008
Big Three Seek $34 Billion Aid
GM, Chrysler Warn of Collapse This Month as Lawmakers Explore Bankruptcy

One idea that emerged from the talks would have the U.S. government put up as much as $40 billion to fund reorganizations under bankruptcy for GM and Chrysler, these people said.

こうなるとまだ何か時限爆弾や地雷が埋まっていそうで、買うタイミングの見極めがますます難しくなりそうです。

今後のビッグ3救済への見通しとしては、4日に上院で公聴会→5日に下院で公聴会→来週にも審議入りの予定、というのが現時点で分かっていることですが、4日、5日と公聴会を経てどうなるかは未だ不透明なようですね。

米ビッグ3、チャプターイレブン申請の可能性

いよいよ今年もあと1ヶ月を残すばかりとなりました。
思えば今年は歴史に残る激動の年。
例年12月の株式市場は堅調であることが多く年末にかけて掉尾の一振(とうびのいっしん)が期待されるところではありますが、今年はどうでしょうか。

米国の金融危機問題は先日のシティグループ救済でひとまず最悪の事態を免れたところですが、あと1つ残る当面の懸案事項はやはり引き伸ばしにされているGMをはじめとしたビッグ3の救済問題につきるでしょう。

明日12/2はビッグ3再建計画の提出期限です。
先月18、19日に開かれた公聴会においてビッグ3の首脳陣の対応があまりにもお粗末であり唖然とする内容でしたので、世論や議会の中でも反発が高まっている状況を受け、明日どういった再建計画が示されるのか非常に注目されるところであると思います。

GM、フォード、クライスラー、通称米ビッグ3はアメリカの象徴のような企業でもあり、事の成り行き次第ではある意味金融機関の破綻以上のインパクトをもたらすものといえます。とはいえ公的資金を注入する以前に市民(納税者)と経営不安に陥れた当事者(首脳陣)の認識のギャップの大きさが人々を呆れさせているのだとも思いますが。あの公聴会の様子を見る限り・・・。

万一明日示される再建計画の中で世論や議会を納得させるようなものが示されず、議会が承認しない場合は、政府による救済は絶望的となり、GMのような巨大企業といえどもチャプターイレブンの申請に追い込まれる可能性が出てくるでしょう。
今回のビッグ3がそろっての申請となる場合、リーマンショックのごとく再び激震が走り、事と次第によっては金融不安以上のさらに幅広い混乱を招くことが予想されます。

通称「チャプターイレブン(Chapter 11)」(以下、チャプター11)とは、米国連邦破産法第11条のことで、日本の民事再生法にあたるものです。
※最近ではリーマンブラザーズの例がありますね。9/16記事参照

このチャプター11のメリットは適用されると債権回収や訴訟などが一旦停止になることが挙げられます。
通常企業が破綻すると債権者から債権回収の訴訟を提起され、その後の再建計画にも支障をきたす場合が多いのですが、この制度により経営者が再建に専念できるというわけです。
ただ、先月の公聴会におけるあの面々の態度を見る限り、安易な債務圧縮(要は債務棒引き)を助長する恐れのある本制度適用がそう易々と認められれば米国民の反発は必至であり、議会と世論を納得させるだけの計画を明日、如何に示せるかが鍵となりそうです。