日米バブルの因果~本日麻生内閣発足

日本ではバブル崩壊の後始末に十数年の時間を費やし、その間何人も首相が変わりましたが、無策が続き遅々として処理は進みませんでした。
当時業界4位の山一証券が破綻(1997年自主廃業)してようやく皆の目が覚めたのはほんの10年前。
その後日本では金融不安の風が吹き荒れ拓銀、長銀、日債銀までも破綻。
誰もが潰れないと信じてきた大手銀行も相次いで経営危機に陥り血税である公的資金が投入されていきました。
バブルの事後処理にしてはあまりにも遅く傷口も広がりました。失われた10年、15年とはよくいったものです。
一昨年メガバンクをはじめとした各銀行はこれらの借金を完済。真っ先に返済したのが三菱東京ですがその日本の金融機関が今度は米国の金融機関を救うという構図。

この数日の間に日本の金融機関による米国金融機関への買収や出資が相次いでいます。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が米モルガン・スタンレーに最大9000億円野村ホールディングス(8604)は経営破綻した米リーマン・ブラザーズのアジア部門に238億円三井住友フィナンシャルグループ(8316)は米ゴールドマン・サックスに数千億円(*その後バフェット氏の出資により三井住友への要請を見送り)。この一両日だけでも相次ぎ明らかになった日本企業による出資・買収総額は1兆円を超える勢い。

このたびの一連の金融不安が山一と同じ業界4位のリーマン破綻に端を発しているだけに何かの因果を感じずにはいられません。

本日臨時国会が召集され、午後の衆院本会議で22日に自民党新総裁に選出された麻生太郎氏を首相に指名。
現在は衆参ねじれ国会ですので当然参院では小沢民主党代表が選出されましたが、「内閣総理大臣の指名」はいわゆる「衆議院の優越」の対象。
憲法67条の規定により衆議院の指名が優先され、麻生自民党新総裁が第92代、59人目の内閣総理大臣に選出されました。
官房長官ではなく麻生新総理自ら発表する閣僚名簿にも大きなサプライズはなく、郵政改革反対だった中曽根氏起用や財務大臣への中川氏起用・金融担当との兼任に賛否両論ありながらも、マーケットにおけるインパクトは少なく、米国発の一連の金融不安の陰にすっかり隠れてしまっています。
政策買い」を旨とする海外資金はあまり期待できなさそうですね。

本日の日経平均は小幅続伸。グローベックスの堅調な推移から、短期筋によるショートカバーが加速した格好ですが、とてもご祝儀相場といえるものではありませんでした。
小泉元総理の劇場型の政治とその改革への国民の期待はすっかりなりをひそめている現状。
予定調和的に誕生した安倍~福田~麻生ラインからは日本経済に対する明確なビジョンが見えてこないのが非常に残念でなりません。

リーマンショックの影で

米国証券4位のリーマン・ブラザーズ連邦破産法11条の適用を裁判所に申請すると発表。
これを受けNYダウは300ドルを超える下げで始まり、引けは504ドル安と急反落しています。
CMEは11730と3月の年初来安値水準(11610)に肉薄。先刻日経平均先物がようやく寄り付いたのは9:04。始値は11570とこれをあっさり下抜けています。

政府系住宅公社は救済したとしても、リーマンのような民間の企業に関しては厳しいという、国税の再配分を託された政府としてはフェアな措置と言えます。
リーマン破綻は「自業自得」、税金の無駄遣いをしない今回の措置は正解という見方が大勢です。
メリルリンチはバンカメが救済、AIGも救済される方向で進んでいる模様ですが、つなぎ融資申請結果如何では数日すらもたない可能性もありまだまだわかりません。
かつてブラックマンデー9.11事件による暴落も3日ほどの間に一時的な反発をしていますが今回はどうでしょう。

このリーマンショックにより最大のエクスポージャーとなったのは500億円近くの焦げ付きを出すと予想されているあおぞら銀行。次いでみずほコーポレート銀行や新生銀行などが続きます。メガバンクである三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行も多分に漏れず予断を許さない状況。

TOPIX、とりわけ銀行株の動向には特に注目です。
先日の任天堂決算といい今回のリーマンブラザーズ証券の破綻といい、実にインパクトのある材料を市場に提供してくれています。
本日のようなショック安の日には、デイトレの朝のシステムはもちろん、裁定取引戦略をされる方にとってもまさに大きな金塊をみつけたような心境かもしれませんね。リーマンショックの影で粛々と・・・。
投資戦略というのはまさにかかる事態にこそ磐石であることが求められ、それが真のリスクマネジメントといえましょう。