もし米国債が格下げされたら市場にどれだけの影響があるか

件の米国債デフォルト危機は水際で食い止められ一応の決着。
ようやく債務上限引き上げ法案が下院で可決されました。
上院は日本時間で明日3日の午前1時に採決され無事可決される見通しです。
当面の期限であった8月2日を事前の合意で乗り切り、無事デフォルト危機は回避されたかに見えます。
まさに土壇場での決着でまるでチキンレースを見ているようでした。

次に待っているのは「米国債の格下げ」問題です。

もし米国債が格下げされたら市場にどれだけの影響があるのでしょうか。

これが日本国債の格下げなら影響は限られています。
これまですでに日本国債は格下げされていますが、債券市場も株式市場も影響は限定的でした。
しかし米国債となれば話は別です。

日本国債のように9割以上を日本人が保有しているのと異なり、米国債は半分以上を米国以外の国が保有しています。
長年トップの格付けAAA(トリプルエー)を保持してきた米国債が仮にも格下げになったとあれば、その影響は計り知れません。

先日かの著名な投資家ジョージソロス氏がロイターのインタビューで米国債が格下げされた場合の金融市場への影響について消極的な見方を示していたり、一部のニュースでは日本の国債を引き合いに出して楽観視する見方すら出てきています。
しかし本当にそうでしょうか。

量的緩和第2弾(QE2)により米国は市場から巨額の米国債を買い入れ、ジャブジャブに資金を放出してきました。
つまり自分でドルを増刷してそのお金で国債を買い、市場を買い支え、遂には自国の最大の債権者になっているのです。
この空前の円高も当然の結果であり、FRBのやりたい放題のおかげでドルの価値を低下させ、信用を落としてまでも輸出力を高めようとしています。
このような無節操ぶりにもかかわらず、未だに米国債は格下げされていません。

これまで実際にS&Pやムーディーズがすでに見通しをネガティブに変えたと発表して警鐘を鳴らしてきたのは事実です。
それでも世界的な影響を考慮して実際の格下げには至らないままでした。

それが今回の債務上限問題によるデフォルト危機で俄かに現実味を帯びてきています。

さすがにこの連日のデフォルト危機で市場は悲観論を織り込み済みな面もあり、1ノッチ程度の引き下げ(AA+)ではパニックにはならないと思いますが、2ノッチ以上(AA)の引き下げがあれば大波乱が予想されます。

日本国債の格下げもまだ記憶に新しいですが、予想はされてはいたものの実際の引き下げのタイミングには疑問がありました。
この時の日経平均への影響は一過性のものでしたが、この手の発表は不意打ちが多いですので要注意ですね。
米国債の格下げによる金融市場への影響度は未知数ですので、いざ発表があった時、タイミングによっては債券市場でサーキットブレーカーが発動したり、連続ストップ安になることも予想されます。
しかし日経先物では逆にチャンスと言えそうですね。

揺れる米国債務上限問題 もし米国債がデフォルト(債務不履行)に陥ると日本にはどんな影響があるのか

今日の日本時間10時にオバマ大統領が会見予定なので注目です。
昨日の朝には下院議長との会談で一応の決着が見られそうだったのに未だに決着していないこの米債務上限問題。
さすがに民主、共和両党も米国債をデフォルト(債務不履行)にするわけにはいけませんので最終的には決まるはずですが、予断を許さない状況に変わりはありません。

もし米国債がデフォルトに陥ると日本にはどんな影響があるのでしょうか。

米国には債務上限(現在で14兆3000億ドル)があるので、国債を発行し続けてその上限に達してしまうとそれ以上国債が発行できなくなります。すると資金繰りがつまりデフォルトになってしまうという問題です。
迫り来る当面のリミットは8月2日。
それまでに連邦債務上限を現状から引き上げなければ、国債の利払いや元本の支払いができなくなり、さらには年金も払えなくなり、最悪政府機関も機能しない麻痺状態になってしまう可能性だってあります。

一見これはギリシャと同じようですが、全然違います。
ギリシャはお金がないからデフォルトになるのです。
しかし米国は上限があるから発行できないだけの話ですので、この債務上限上げてしまえば簡単に済む話です。
しかし、それがなかなかできない。
なぜ上限上げてはいけないのかというと、財政赤字を無制限に膨らませてしまうからです。

今もめているのは、財政赤字をどう縮めるかということ。
そうはいってもデフォルトになっては元も子もありませんし、これまでも何度も上げてきているのでこんなに話題になることでは本来はないのですが、多分に政治的思惑が絡み合って今回は難航しているというわけです。
来年に大統領選挙を控える現政権側は一気に上限を引き上げてしばらくこの問題を忘れたい思惑があり、一方で共和党としては段階的に引き上げ、大統領選挙前に再び債務上限問題を噴出させて選挙を有利に進めたいと考えるでしょう。

当面のリミットまで決着するとは思いますが、もしこの状況が長引き、もめ続ければ、そもそもデフォルトの前にアメリカの国債が格下げされてしまう可能性だってあります。
米国債は世界で一番信用力がある国債です。
それが格下げされるということは、米国債の金利が上がってしまうということ。
利払いが増えれば欧州も日本もそれに引っ張られて金利が上がる可能性があります。
その結果、ただでさえとんでもない額に膨れ上がっている日本の借金が、金利が上がれば利払い負担はさらに加速度的に増えることになります。
米国がくしゃみをすれば日本は肺炎になると言われますが、それどころではない非常に怖いお話になってきます。

従って日本は金利が上がる前に何とか早く財政健全化に向けて動きはじめなければなりません。
昨日欧州でギリシャの格付けが下から2番目の水準まで引き下げられ「事実上のデフォルト」状態となりましたが、まだ先進国でデフォルトになるなんてことはないと考えている人も多いのが実情です。
報道全般を見ても対岸の火事のごとく日本とあまり関係ないように見られていますが、リーマンショックの時のように全然他人事ではない問題ははらんでいるということです。

肝心の日本ではようやく二次補正予算が成立したところです。
日経225先物の気配を見る限りは大きな動きにはなっていません。
この閉塞感を打破するためにもやはり日本の政治に風穴をあける何かがほしいところですね。
それが何かここでは書けませんが。